完璧推人始祖

パーフェクト・オシジン

更衣室でナンパされた話

 もうかなり前の話になるが、知らない男の子に連絡先を聞かれたことがある。

 場所は都内のボルダリングジムの更衣室。友人2人と熱いボルダリング研究会を終え、このあとどうするか談笑していたときのことだった。

 

「筋肉すごいっすね」

 目をキラキラさせた初対面の男の子に突然話しかけられた。まあこれぐらいならよくあることだろうし、僕も素直に嬉しく思う。自分で育て上げた肉体に関して褒められるのは悪い気はしない。例えばポケモンをやっていて、苦労して作り上げた自慢のパーティーを褒められたら悪い気はしないだろう。ちなみに僕はこの時上半身裸である。

 

「え、普段から鍛えてるんですか?」「ボルダリングにはよく来るんですか?」「おいくつですか?」「お仕事は何されてるんですか?」「LINE交換しませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待て待て待て待て。

 

 そんなに情報いる?何これ仲良くなる流れなん?僕上半身裸なんだけど?これだけの情報を一気に聞き出されることになったわけだが、特段話が盛り上がったわけではない。相手の話の転がし方が上手というわけでもなく、それはもう強引に、こちらの意志とは関係なく話は転がされていく。

 一方的に聞かれるのも何なので、その場で一応聞き出した男(仮にケンジくんとする)のスペックを残しておこう。

 

ケンジくん

身長:160cmちょっと

年齢:21歳(当時の僕の1つ下ということになる)

職業:IT系企業勤務、2年目らしい(専門卒らしい)

その他:話すときの顔が近い。ボルダリングは初めて。今度飯でもどうですか?とのこと(なんで?)

 

 

ということでなぜか連絡先を聞かれた当日、さっそくケンジくんから連絡が来る。

f:id:satokaf:20200204194128j:plain

ここまでが6月9日の出来事である。

 

6月12日

f:id:satokaf:20200204194424j:plain

 誘いが唐突である。そもそも、この前の上半身裸で受けた事情聴取のような質問攻めの後、何を魅力に感じ僕がケンジくんとご飯に行きたいと思うのだろう。逆に、ケンジくんはどうして僕と一緒にご飯に行きたいと思ったのだろう。ご飯に誘うまでの経緯があまりに不明すぎる。何を考え、何を目当てにしているのかわからない、最初の一言目が「筋肉すごいっすね」だった人。ちょっと怖い。

 ケンジくんには申し訳ないが、既に面倒になってしまった僕は、ここで既読スルーをすることにした。

 

6月18日

f:id:satokaf:20200204195042j:plain

 「いつ頃空いてるか」という質問をスルーされた後のこれ、かなり勇気を出して送ってくれたのか、相手の気持ちに鈍感なのかのどちらかだろう。

 僕はライブに行くほどお笑いが好きなわけではないので、申し訳ないがお笑いライブに誘うのは完全にハズレである。のだけれど、お笑い「と歌手」のイベントってなんだろう。くそう、正直少し気になってしまった。いやしかし、「誘われた」って誰に?僕はケンジくんのことすら全く知らないのに、その友人が登場する可能性もあるの?なんか誤字ってるし、とりあえずスルーで。。。といきたいことろだけど、一応断りを入れておくことにした。

 

6月19日

f:id:satokaf:20200204195612j:plain

 一日置いてから返事をしてみた。

 

6月24日

f:id:satokaf:20200204195927j:plain

 ……僕が悪かったね。脈無しのときにはしっかりそういう態度で接してあげなきゃいけないんだと思う。いや、ボルダリングジムの更衣室で上半身裸でいるときに話しかけられた男の子に対して脈がどうとか言ってるのがまずわからんけども。

  これに関しては未読スルーをした結果、その後ケンジくんから連絡が来ることは、二度となかった。

 

ケンジくんの目的は何だったのか

 相手の目的がどうであれ、誰かに必要とされることに関しては悪い気はしない。むしろありがたいことではある。彼がどうして僕ともう一度会いたがってくれたのか、考えられるものをリストアップしてみよう。

①友達になりたかった

 友達になりたいのであれば、もう少し距離の詰め方ってものがあるんじゃないかと思う。それより「筋肉すごいっすね」の一点で、この人と友達になりたいなと思ったのであればやっぱりちょっと怖い。

②彼氏になりたかった

 好きな相手を誘うのは難しいよね。わかる。わかるけど、僕も誤解されがちだけど、僕は女の子が好きだし、「一番気楽に連絡取り合えるけどいざ付き合うとなったらちょっと違うかな」的な間柄になる気もないので、その気持ちには応えられそうにないんだ。ごめんね。

③宗教・マルチの勧誘

 一番可能性が高いのはこれかなと思っている。「断る」ってなかなか心理的コストが大きいので、誘われる前に回避していきたいんだよね。 ちなみに、この年の冬に高校の友人から久々に声をかけられて、「無限にコミュニティが広がってめっちゃ儲かるビジネス」に誘われることになってしまって、その時はダンガンロンパ参加者並みに誰も信じられなくなってしまった。この場合、彼らの目的は僕ではなくて、「ちょうどよさそうな男を入会させること」になるわけで、僕自身のことは見ていないわけだ。とすると、ケンジくんは僕のことを見ていたわけではないのかもしれないね。

 

 今になってはそんな理由も知る由もないことで、そういう意味ではケンジくんと一度も会わなかったことに少しだけ後悔している。あの日、目を輝かせていたケンジくん。LINEを退会してしまってアイコンが👤になったケンジくん。そんな彼の未来に幸あれ。